側線から

「いつの日の事だったか
 あたし よくは覚えていないの」

     ((雨・雨・雨の音))

  瞼を潜って沁みてくる光
  カーテンを閉じて
  もう
  睡って仕舞いたい

     ((隙間を縫う・吐息))

あたしの記憶はいつだって
踏みつけるところで終わってる

     ((脚の進む・正しさ))
     
     ((脚の降ろされる・弱))

   い っ ぽ

  あなたの  完璧すぎた  聲



本当はいつだって忘れていたい

世界は美しく点滅を繰り返して
後ろと呼ばれている方向へ流れていってしまった

  
  あたし
  朧気な静けさの中で
  両耳を塞ぎ
  低い場処を狙う響きだけを捜してた

     ((これは?))

  ・・・・・誰かの足跡

 ・・・・・誰かの足音

あたしの
あいまいな
あしもとから
おしよせてくる

     ((夢の中の出来事))

  またたくと
    消えてしまう


    つなぎとめる
      すべをしらない 


これ
あげようか

ひみつ

ひみつのよるだよ


深くなるよ/潜水/ちかちかして/窒息/幾重にも/幾重にも


     息をコロシテ

  ((やってくるよ))

     息をコロシテ

  ((夜がやってくるよ))

     息をコロシテ

  ((不思議な夜がやってくるよ)) 


そしたら連れていって
あたし
帰る場処なんて知らないから

     ((はやくなる・はやくなる))

        いつしか
   脈拍を追い越すんだ


「なんだか
 かなしい空だね」

「降ってくる
 あれ なんでしょう」

ひかりのかたちをして
おちてく

    ひと

    ひと

    ひと

 思い出した


    カーテンが翻る
    
あたしに囓りついた  台詞

  瘡蓋

    降りしきる雨の  音

      愚想

   きず きず きず   きす

伝えられなかった 冗談めいてて

  こんなこと
  いえるはずがない

     
目の奥が痛い

     数字が今日を告げている


泣きたくなる朝
だれのものでもない名前を喚んで
それを真面目に恋人だと思い込んでいた

     それでも
     あたしのかわりなんて
     いなかったの

ぼんやりと
しゃがみこむ

あたしのひざは
つめたかったから 

なにもかもがふたしかで
しんでゆく

へだたりをうめたがる
あなたの
ひくつなわらい

     本当の事なんて知らないままでいい
     あたしも死んでゆく


降りしきる雨を
花ふぶきだって
嘯いてさ
あたし
ワンピースに着替えたら
寂しさについて
考えてみた


おちてくる

あの
しろすぎるもの
いったい なんだろう


 水圧で腫れ上がった肺

 指の間を摺り抜ける水流

 エーテル状の光が射してきて
     とうめい
     それに なないろ  


あたしはいい加減なお願いをして
まだ湿っている睫毛
確信犯よ

   とじこめて


  あ、

ひざからおちるひざからおちるひざからおちる((緩慢な速度))かけらちるちるちるちるかけらきらきらきらはくしゅはくしゅ((音が消えて))あたしあたしあたしあたしこめかみだんがんだんがんだんがんあかあかあかあかあかあかあか


  と び ち る 

礼拝堂みたいな音楽がして

子供たちが歌っていた