雪の日

耳の奥が痛いのは 
雪がみんな 
音を喰べて仕舞うからなんだ。 
って、雪原の真ん中で 
ボンボン帽子の男の子が 
教えてくれた。 

 (掌があったかいね。) 

 (向こうの森まで真っ白だね。) 

 (白鳥が啼いてるよ?) 

 (どこ?ねぇ、どこ?) 

 (みえないね。みえないね。) 

 (辺りは真っ白だね。) 

この雪は 
カミサマが降らせているんだ。 
って、男の子云った。 

その子の大きなボンボンが弾んで 
あたしは真っ逆さまに転ぶ。 

 (白鳥が啼いてるね。) 

 (瞼を瞑ればみえるよ。) 

 (あたしの言葉、全部白くなるんだ。) 

 (あったかいね。) 

 (あったかい雪だね。) 

誰かが讃美歌をうたってる。 
あれは白鳥の聲だ。