堤防と

電信柱の
路地を抜けて
懐かしい唄は右手に

選べないからだのまま
どこまでゆこうか
どこまでゆこうか


手を振っていた
知らない帰りみち

知らないあたしたちは
女の子のように
恥ずかしがったりもした

遠慮もなく泣くから
来たみちで
もてあましていた心細さとかよりも
洪水しそうな思い出を左手に

堤防の向こうへ
堤防の向こうへ


帆をあげて
恋に似た感情がやってくる


ほんの少しだけ
睡っていたいと
俯く
あなたの影

いづくへか
いづくへか
こころは
ぬぐえない
ふくらみまでさしかかり
膝を抱える


知らないヒトの名前を
砂浜いっぱいに書いて
無くして仕舞った
なんだかよくわからないモノを
無くして仕舞ったのだから
なんだったのかよくわからないソレを
気づかないうちに連れて
一番大切な名前を呟く


男の子は
いいなと思った
あの日

あたしは
いってしまった
夏を想っていた


くちぐせは
なんだったのか

波が
寝返りをうつ


水平線に
溶け入りそうな熱を呑んで
キスがしたいと
あなたが
ふくれあがる


堤防を越えたら
今すぐにゆこう
今すぐにゆこう