シトロン

うみ
   きらきらしてる

うみ
  きらきらしてる

     ひかり
    ひかりのつぶ
   あわ

  ああ
    ほんとうに
 これっきりなんです
 これっきりなんです

とおく
にじんでくのは
きてき

はなは
ほのおを
あげている


+ + + + +


吐く息が
ひどい白色をしてましたから、
怖ろしい白色をしてましたから、
あたし
そんな具合でしたから、
なおさら
願ったりしては
ならなかった。

そう、あれ
殴りつけたようなしづけさ。
また慎ましやかに
また烈しさを増して
所在もわからなくしてしまった。
そう、あれ
みんな燃えつづけてる。

 みずたまりの
 はねて
 のいばらの
 白

置いてゆかれたように
あたしの中心をなぞる。
かがやかなうたは知らない。

いつも
雨の止んだ朝みたいなの
鼓膜の縁で蟲がないている。

夏草へ横たえた胸
こぼれつづけた
のいばら
薄情な白色


「はながちったら
 ゆきましょう
 はながさいたら
 ゆきましょう

 そうして
 かれら
 なんていったかしら

 めを
 ほそめて
 くちを
 つぐんで

 あたしはいつまでも
 うつぶせたまま
 あたしじしんをだいて
 だいてそとの
 そとのけんそうと
 けんそうとふるあめの
 あめの
 ような白色を

 きのうには
 きょうのはなを
 きょうには
 あしたのはなを


あたしを行方知れずにしてしまった
たくさんの事柄について
はなびらの焔はそのままに
急激になにもかもを遠くにする
暴力的な白色で溢れかえった午后
夏草がゆらゆらと落とす
無条件な時間の蓄積を眼で追っている
たゆみない
その名を呼び忘れて


いそがないと
やってきてしまうんだよ
そうして
しまったの
あたし
夜をこえられないまま

 きのうも
 だった

 きのうも
 だった

はなをかざって
ゆびをそめて
はなをかざって
ゆびを

(いきおいをまして
 おそいくる)

つんでいた
つんでいた
つんで

くびにかけられた
ゆびは
きれいにかふんで
そめられていたいの
からっぽな
ながれ
くさのにおい

かえしてください

あたしは
ひとり
うみのほとり

つまさきをなくしたの

ひかりのなかへ
さらわれて
ああ
なんて
うみ
きらきらしてる
うみ
きらきらしてる


+ + + + +


  うみ
   きらきらしてる

うみ
  きらきらしてる

     ひかり
    ひかりのつぶ
   あわ

  ああ
    ほんとうに
 これっきりなんです
 これっきりなんです

とおく
にじんでくのは
きてき

はなは
ほのおを
あげている

 なにかが
 高速で通過してゆく

硫黄だろうか
チラチラとしている
木炭だろうか
それとも
ほしだろうか
ほしだろうか
あんなに爆発して

それぞれが好きなように
繋がる
繋がってまざってく
まざってめくれてく
めくれて
いたくなる

     ひかり
    ひかりのつぶ
   あわ

とうとういたくなったね

あんなに爆発して
とうとうみんな
きれいにちぢまってしまったの

これから
生まれゆくもののために
これを


そそぐ

      防波堤へ
     かかりゆく
  レンブラントの光

そうしているまにも
ここへ

 飛び交ったりしていた
 空はすっかり
 硝石を焚いている

今日へ
生きているもののために
これを
もう聲も
届くことのないもののために
これを
かえらない
失われてしまったもののために
これを
これから
生まれゆくもののために

     ひかり
    ひかりのつぶ
   あわ

ストロボの海

  ああ
    ほんとうに
 これっきりなんです
 これっきりなんです

あたしと
みずのそこと
それと
すべてと