火垂る(ほたる)

あなたから
よぉくみえるように
花火うちあげて
あなたから
よぉくみえるように
花火うちあげて


あたしたち きらきら
垂れる
してしまう
景色から零れ続け
抜け落ちたあたしは
あたしたちの音をそっとかくして
(心臓のまたたき。)

なんでだろうね

なにもかもは
うまくいかないんだ


   ここは
   地上から300キロ
   を離れた
   周廻軌道上
   天の河を準えて
   あかいほし
   あおいほし

   「そうね、
   あの島にゆくより
   ずっと
   近いんですもの。

   「ほら、
   すごい爆発だ
   きらきら
   だ。
   裂け目から
   あたしたち
   垂れる
   してしまう。


((あなたから
 よぉくみえるように
 あたし
 花火うちあげて


ここいら一帯は
ばらまかれた ひかり
まばゆい ひかり
消える。消える。
際限もなくその裂け目から
ふれられる程そばに
ふれられぬ程そばに
すべてがね いとおしくて
あたしは呼吸をも景色へ俯せたよ
そのうしろで死んでゆく
ちっぽけなグライドをみていた

   あたしは吸い上げられてゆく

爆発する
音域を無にしたら
目の玉がやけどしてしまうよ

   みえてしまうよ。


・・・・・えぇ。そんなことはいいんです。
・・・・・えぇ。そんなことはないんです。
・・・・・えぇ。そんなことは。


数限りなく
あおざめてゆくような 
彼方からひろがるは音域
(同時に塞がれる景色。)

こなごなになる足許
裸足をくすぐった綿毛が
天の河を準えて
いま
いま

((あたしは いま うちあげられて


   7千の島々には
   7千の花々が
   咲いててね
   だけどね
   その名前は
   忘れちゃった

   あたしは
   うちあげられて
   
   点滅しているのは
   ほしたち
   きらきらだ
   きらきらだ


光と銃声の溝で
ふきだまる電流の
ゆうぐれたグライド
あなたあらざる
そのからだにおりたい

   さがしていたの
   ずっと
   おりるべき
   からだ 
   おりるべき
   にくたい

   ここは
   地上から300キロ
   を離れた
   周廻軌道上


だけどね
すぐ
垂れる
してしまうんだ

あかいほし((きらきら
      だ。
あおいほし((きらきら
      だ。


中空で裂けた声をきいた?
だけど
決して呼び間違えたりはしないんだ 

   大きな音がするよ
   だけどね 
   決して
   呼び間違えては
   いけないんだ。

あ。
ほら みて
あたし駆けるたびに
まっしろな閃光が奔る
もえたつ わたげ
わたげ うちあがる

   あたし
   花火
   だ。

わたげ
まっしろにもつれたまま

   あたし
   花火
   だ。

   あたし
   誰かの
   しあわせだけを
   祈ったりして
   
わたげ ひばな 
発芽したばかりの
やわらかな 吐息を


生まれ落ちては
なんども なんども
あたしは景色になった
あたしは中空で声をあげた
ただ そのようにあるだけの
ことばで溢れた地上にも
光はやってきて

かなしくて
もろい
うつくしい
ひかり

駆け抜けた
すぐうしろから
もえたつのは
   わたげ
   ひばな
   ひかり ひかり ひかり
あたしたち
きらきら
に なってしまう

   あらゆる
   周廻軌道上から
   あたしたち
   垂れる
   してしまう。

はしゃぎまわっている
雪みたいに発光している綿毛
ここはとても明るいよ
明るくて灼けようとしている
てのひらとてのひらを
つぼみのようにあわせえたら
ただしづかに供えました



あたし
花火うちあげて
わたげ
あしもとから
もっとまっすぐに
とべ

いとおしい
いとおしい
てのひらとてのひらをあわせて
ここは どこの周廻軌道上ですか?

   ちがうよ
   ひかりのうみだよ

   ひかりのうみだよ

もえたちる
ほたる
あたしのあしもとから
つぎつぎに
うちあがれよ

ここいらいったいは
ばらまかれた ひかり
まばゆい ひかり

こどもたち
みんな
てんしみたいにわらって
わらって